自己破産及び個人再生の場合のおおよその見込時間等

第1 自己破産の場合

1 総論
□ 自己破産の場合の,おおよその見込時間は以下のとおりです。
① 一通り取引履歴の開示があってから申立てをするため,受任通知の発送日から3ヶ月から半年後ぐらいになります(大阪地裁の運用上,債権調査票は,発行後6ヶ月以内のものであることが求められていることとも関係します。)。
そして,99万円を超える財産がなく,重大な免責不許可事由もないような場合,書類に不備がない限り,その日の午後5時付で裁判所から破産手続開始・同時廃止決定が出ます(「即日審査方式」といいます。ただし,堺支部又は岸和田支部の場合,特に問題がないときでも,2週間以上は待たされます。)。
そして,破産手続開始・同時廃止決定が出た日の8週間ぐらい後の日を免責意見申述期間の締切とし(破産法251条3項参照),免責意見申述期間が過ぎてから1週間後ぐらいに免責許可決定が下ります。
免責許可決定は,下りてから2週間後ぐらいに官報に掲載され(破産法10条1項),官報掲載日から2週間後に確定し(破産法9条後段),効力を生じることになります(破産法252条7項)。
② (a)軽微な免責不許可事由があるような場合,又は(b)実質債務額(総債務額から住宅ローン及び保証債務を除いた債務額)が1000万円を超える場合,1ヶ月後に免責審尋期日(10分程度の裁判官との面談を裁判所内の一室で行います。)が指定されることがありますものの,免責審尋期日の当日に裁判所から破産手続開始・同時廃止決定が出て,その2ヶ月後ぐらいに免責許可決定が下ります。
その後は①の場合と同じです。
③ 破産管財人が選任された場合,破産手続開始決定が出てから3ヶ月ぐらい後(破産規則20条1項2号参照)に第1回債権者集会が招集されます。
そして,(a)異時廃止事件の場合,免責に関して特に問題がなければ,第1回債権者集会で異時廃止決定が出て,同じ日に免責許可決定も出ます。
(b)配当事件において破産財団の換価が速やかに終了した場合,第1回債権者集会で破産財団の換価の状況が報告され,かつ,一般調査期日が実施されて債権調査が終了します。その後,2ヶ月ぐらい後に指定される第2回債権者集会において配当の状況が報告され,破産手続終結決定が出て,同じ日に免責許可決定も出ます(免責に関して問題があったり,不動産等の換価がなかなか終わらなかったりした場合は別です。)。
その後は①の場合と同じです。
□ 同時廃止事件の即日審査において補正が必要とされた場合においても,通常は,事務連絡等により補正を指示し,追完書類の提出等により補正が完了した場合,口頭審査を経ることなく,破産手続開始・同時廃止決定が下されます。
2 免責許可決定に対する即時抗告
□ 免責許可決定に対する即時抗告(破産法252条5項)は,免責許可決定が官報に公告されてから2週間の間,される可能性があります(破産法9条ただし書)。
なお,官報に公告されない裁判(例えば,破産法87条1項に基づく破産管財人の報酬決定)に対する即時抗告の期間は,民事訴訟法の原則どおり,裁判の告知(送達を要する裁判の場合,送達)を受けた日から1週間です(破産法13条・民事訴訟法332条)。
□ 官報公告及び送達の両方がされている場合の即時抗告期間は,破産法9条後段の規定の趣旨,多数の利害関係人について集団的処理が要請される破産法上の手続においては不服申立期間も画一的に定まる方が望ましいこと等に照らし,官報公告のあった日から2週間とされています(破産手続開始決定につき最高裁平成13年3月23日決定参照,免責許可決定につき最高裁平成12年7月26日決定参照)。
ただし,破産法13条・民訴法331条・285条ただし書に基づき,免責許可決定等の送達を受けた者が上記期間前にした即時抗告も有効です(最高裁平成13年3月23日決定参照)。
□ 免責許可決定等に対して即時抗告があった場合でも,明らかに理由がないものであるときは,抗告事件の記録だけが抗告裁判所に送付されます(破産規則5条参照)。
□ 免責制度は,かつての破産法(大正11年4月25日法律第71号)が制定された当時は存在しなかった制度であって,破産者は当時,破産手続が終了した後も,破産手続において弁済されなかった残余の債務につき,なおその弁済の責に任ずることになっていました。
しかし,そのような取扱いは破産者にとって余りに酷に過ぎ,また,債権者が破産者に対し,破産手続が終了した後,残余の破産債権についてその責任を追及するということも稀であり,社会的に見ても,このようにいつまでも破産者に責任を負わせる必要はないという考え(昭和27年5月19日の参議院本会議における法務委員会委員長の答弁参照)に基づき,かつての会社更生法(昭和27年6月7日法律第172号)と併せて制定された「破産法及び和議法の一部を改正する法律」(昭和27年6月7日法律第173号)により,昭和27年8月1日,免責制度が導入されました。
なお,現在の破産法(平成16年6月2日法律第75号)は,平成17年1月1日に施行されました。
3 破産法における三つの手続
□ 破産法は,正確には以下の三つの手続を定めています(破産法3条参照)ところ,破産手続及び免責手続は並行して進行します。
なお,免責許可決定が出た時点で当然に復権します(破産法255条1項1号)から,復権の手続を意識することはありません。
① 破産手続(破産法15条ないし253条)
② 免責手続(破産法248条ないし254条)
③ 復権の手続(破産法255条及び256条)
4 破産手続と憲法32条及び84条
□ ①破産手続開始決定及びこれに対する抗告事件,並びに②免責許可決定及びこれに対する抗告事件は,公開・対審(=民事訴訟における口頭弁論,及び刑事訴訟における公判)の手続を経ずに,原則として書面審査だけでなされます(破産法8条1項参照)。
なお,破産手続は純然たる訴訟事件についての裁判ではありませんから,このような手続をとることは,公開の法廷における対審裁判を受ける権利を保障した憲法32条及び82条には違反しません(①につき最高裁大法廷昭和45年6月24日決定,②につき最高裁平成3年2月21日決定)。

第2 個人再生の場合

□ 個人再生の場合,一通り取引履歴の開示があってから申立てをするため,受任通知の発送日から3ヶ月から半年後ぐらいになります(大阪地裁の運用上,債権調査票は,発行後6ヶ月以内のものであることが求められていることとも関係します。)。
そして,特に問題がなければ,①2週間後ぐらいに再生手続開始決定が発令され,②再生手続開始決定が発令されてから7週間後ぐらいに再生計画案を提出し,③再生計画案を提出してから5週間後ぐらいに再生計画認可決定が下ります(申立てから再生計画認可決定までおおよそ14週間かかります。)。
再生計画認可決定は,下りてから3週間後ぐらいに官報に掲載され(民事再生法10条1項),官報掲載日から2週間後に確定します(民事再生法9条後段)。
□ 再生計画認可決定に対する即時抗告(民事再生法175条1項)は,再生計画認可決定が官報に公告されてから2週間の間,される可能性があります(民事再生法9条ただし書)。
なお,官報に公告されない裁判に対する即時抗告の期間は,民事訴訟法の原則どおり,裁判の告知(送達を要する裁判の場合,送達)を受けた日から1週間です(民事再生法18条・民事訴訟法332条)。

第3 同時廃止事件において口頭審査期日が指定される場合

1 総論
□ 同時廃止事件においても一定の場合,即日審査を経ることなく,直ちに口頭審査期日が指定されます。
また,同時廃止の要件を満たす事件であっても,即日審査・書面審査の結果,裁判官が口頭審査が必要であると判断した事件については,口頭審査期日が指定されます。
なお,ここでの口頭審査期日は,事実上の面談期日という位置づけであり,正式な審尋期日ではありませんから,裁判官による期日指定決定なり調書作成なりは行われていません。
□ 同時廃止事件において口頭審査期日が指定される場合は,後述する場合に限られないのであって,裁判官が同時廃止での処理の可否や免責等について判断するに当たり,債務者等から事情を聞いて確認する必要があると判断した場合には,口頭審査期日が指定されることとなります。
2 即日審査を経ることなく口頭審査期日が指定される場合
□ 同時廃止事件のうち,以下のような事件については,累計的に即日審査・書面審査になじまないものとして,即日審査を経ることなく口頭審査期日が指定されます。
① 純粋本人申立事件
弁護士が申立代理人となっておらず,かつ,司法書士も書類作成者として関与することなく,債務者が単独で申し立てた事件です。
即日審査・書面審査は,申立準備段階において法律専門家によるスクリーニングを経ていることを前提として,簡易迅速な手続で破産手続の開始及び廃止決定を可能とする実務運用であり,こうしたスクリーニングを経て淫売純粋本人申立事件については,類型的に,即日審査・書面審査になじまないため,口頭審査期日が指定されます。
② 定型の書式(ver3.0又はver3.1)を利用していない場合
即日審査・書面審査は,定型の書式を利用することにより適正かつ迅速な審査を可能とするものですから,定型の書式を使用していない申立てについては,類型的に即日審査・書面審査になじまないため,口頭審査期日を経るものとされています。
③ 実質債務(総債務から住宅ローン及び保証債務を除いたもの)が1000万円以上である場合
④ 破産申立時において事業を営んでいる場合
⑤ 破産申立時において法人の代表者である場合
□ ③ないし⑤の場合については,管財事件への以降の可能性があり,慎重に検討することを要することから,類型的に口頭審査期日を経るものとされています。
つまり,実質債務が1000万円以上の事件については,債務額に見合う信用を有していたことが推認されるため,財産調査のために管財人を選任すべき場合も多いです。
また,事業者についても,財産や取引関係,収支が事業と個人生活との間で分離していないことが多い上,その実態把握が困難な場合も多いことから,管財人による財産調査が必要となることがあります。
さらに,法人代表者についても,法人と代表者の資産が混同していることが多く,管財人による資産調査が必要となる場合も多いほか,法人代表者だけが破産した場合,法人代表者が不在のため後に法人について破産することが困難となる場合もあり,法人についての処理方針についても十分に確認する必要があることから,口頭審査期日を経るものとされています。
ただし,③ないし⑤のいずれかに該当する場合であっても,債務者が生活保護を受給している場合については,生活保護開始決定に際して一定の資産調査を受け,資産がないことが確認されているものと考えられることから,例外的に,即日審査・書面審査の対象となります。
3 書面審査を経て口頭審査期日が指定される場合
□ 前述した①ないし⑤に該当しない事件についても,書面示唆の結果,裁判官が,書面審査による処理は不相当であり,同時廃止の可否や免責等について判断するに当たり債務者等から直接事情を聞いて確認する必要があると判断した場合,口頭審査期日が指定されます。
このような理由で口頭審査期日が指定される場合としては,以下のものがあります。
① 管財事件とするのが相当な場合,又は管財事件への移行を検討する必要がある場合
例としては,(a)一定の換価すべき財産があり,同時廃止処理が不相当な場合,(b)一定の換価すべき財産の存在が疑われ,管財人による資産調査が必要な場合,(c)否認対象行為がある場合,及び(d)管財人による免責観察が必要な場合があります。
(a)につき,(ア)申立人において按分弁済予定であると主張する金額と,裁判所において按分弁済が必要であると判断した金額が異なる場合,及び(イ)必要な按分弁済額には争いがないものの,申立人において按分弁済原始を直ちに準備できないような場合,按分弁済の要否,その金額及び支払方法について協議し,管財事件への以降の可能性を含めて慎重に検討することを要することから,口頭審査期日が指定されます。また,無担保の不動産を所有している場合や,現金及び普通預貯金(99万円以下の部分に限る。)を除いた財産の総額が100万円を超えるような場合については,そもそも按分弁済による同時廃止処理をすることもできないことから,口頭審査期日を経た上で,管財事件として処理されることとなります。
(b)につき,元事業者や元法人代表者であって,現時点において事業や法人の取引・財産と個人のそれとが分離しておらず混同している,又は遺産分割未了の相続不動産の存在が伺われる,などといった理由から,管財人による資産調査が必要となる可能性がある場合には,口頭審査期日を経て,管財事件への移行の要否が判断されます。
(c)につき,記録上,否認対象行為の存在が伺われ,否認権行使の可能性や回収可能性について検討を要する場合にも,口頭審査期日を経た上で,管財事件への以降の要否が判断されます。
(d)につき,重大な免責不許可事由があり,裁量免責を受けるためには集団免責審尋や口頭審査期日における訓戒等では足りず,管財人による免責不許可事由の内容についての調査,及び生活状況についての指導監督等(いわゆる,免責観察)が必要であると判断される場合,口頭審査期日を経て,管財事件に移行することとなります。
② 免責許可決定のために口頭審査が必要な場合
大阪地裁第6民事部では,免責不許可事由のある債務者についても,裁量免責のための相当な措置として,反省文の提出を求めたり,集団免責審尋を実施したりして,免責許可決定をしている例が多いです。
しかし,免責不許可事由が重大で,これらの措置のみでは裁量免責とするには足りず,裁量免責のためには裁判官が直接,個別に訓戒する必要があると判断した場合,訓戒のための口頭審査期日を指定しています。
なお,この場合において,口頭審査期日において債務者に反省の態度が見られない,又は免責不許可事由が重大であるといった理由から,一度の口頭審査期日における訓戒のみでは裁量免責とするに足りないと判断した事案については,口頭審査期日を複数回にわたり続行し,その間の家計収支表等を提出してもらうなどした上で,破産手続開始・同時廃止の決定をすることがあります。
とりわけ,概ね30歳未満の債務者については,短期間に債務を増加させている例が多く,また,生活状況が不安定なものが多いことから,明らかな免責不許可事由がない場合であっても,裁判官が口頭で破産に至る経緯や現在の生活状況・今後の生活等について確認し,債務者に自らの経済生活について反省して見直してもらうため,口頭審査期日を指定することがあります。
さらに,過去に免責許可決定を受けたことがある債務者については,その確定が申立前7年以内ではなく免責不許可事由に該当しない場合であったとしても,再度の申立てに至った経緯を確認し,破産手続開始及び同時廃止の可否や免責不許可事由の有無について慎重に判断するほか,債務者自身にも,一度免責許可を受けながら再度の免責を要するような状況に陥った経緯について見直してもらい,過去の経済生活について反省してもらう必要があることから,口頭審査期日を指定する扱いとなっています。過去に個人再生手続を利用したことのある債務者についても,再生計画履行後の状況,又は再生計画を履行できなかった原因について確認する必要があるほか,破産原因の有無についても慎重な判断を要することから,口頭審査期日が指定されます。
③ 口頭審査期日による事件の進行管理が必要な場合
前述した①又は②に該当しない場合であっても,口頭審査期日を設けることにより裁判官が直接,事件の進行を管理する必要がある事件については,口頭審査期日が指定されます。
具体的には,(a)補正を指示して書面審査を続行したものの,2ヶ月を経過しても補正されない場合,(b)同時廃止処理のためには按分弁済が必要であるものの,按分弁済を指示してから1ヶ月以内に適切な報告書が提出されない場合,又は按分弁済のために1ヶ月以上にわたって積立が必要となる場合,(c)過払金等の財産の回収に時間を要する場合,及び(d)管財へ移行するのが相当であるが,予納金の準備・積立状況の定期的な確認が必要な場合があります。
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3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。