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婚姻費用又は養育費の不払いがあった場合の強制執行等

第1 強制執行の方法

□ (a)家事調停,(b)家事審判又は(c)訴訟の判決若しくは和解において負担を定められた婚姻費用又は養育費の不払いがあった場合,以下の強制執行をすることが可能です。
① 扶養義務等に係る定期金債権による債権差押え(民事執行法151条の2)
→ 「定期金債権についての特例に基づく強制執行」ともいいますところ,婚姻費用等の不履行部分だけでなく,将来の婚姻費用等についても強制執行することができます。
この場合,婚姻費用等の支払義務者の給料等の手取額の2分の1まで差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。
② 扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制(民事執行法167条の15及び16,172条1項)
→ 婚姻費用等の不履行部分だけでなく,将来の婚姻費用等についても強制執行することができます。
   間接強制は,債務の履行をしない債務者に対し,一定の額の金銭(=間接強制金)を支払うよう命ずることにより,債務の履行を確保しようとするものであって,債務名義(例えば,家事調停調書)に表示された債務の履行を確保するための手段です(最高裁平成21年4月24日判決)。
    例えば,間接強制命令の送達を受けた日から1週間以内に未払いの婚姻費用等を支払ってくれない場合,100万円の間接強制金を支払うよう,執行裁判所から,婚姻費用等の支払義務者に対し,命令してもらうことができます。
□ ①扶養義務等に係る定期金債権による債権差押えは,平成15年8月1日法律第134号(平成16年4月1日施行)により創設された制度であり,②扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制は,平成16年12月3日法律第152号(平成17年4月1日施行)により創設された制度です。
□ 婚姻費用等の支払義務者が,給料等の手取額から勤務先の借入金の天引きを受けていたとしても,給料等の手取額の2分の1まで差し押さえることができます(なお,民間労働者の場合,このような天引きは労働基準法24条1項に違反しますから,公務員の場合にだけ問題となります。)。
    また,差押禁止債権の範囲変更の申立て(民事執行法153条)において,借入金の天引きがあるという事情は考慮されません(地方公務員の事例につき東京高裁平成22年3月3日決定参照)。 

第2 債務者の側の不服申立て方法

1 それぞれのケースごとの不服申立方法
□ 婚姻費用又は養育費に不履行がないにもかかわらず,扶養義務等に係る定期金債権による債権差押えがあった場合,①定期金債権についての特例に基づく強制執行の要件を欠くものとして,期限到来前の請求債権の部分については,高等裁判所に対して執行抗告(民事執行法145条5項)を申し立てることとなり,②弁済期が既に到来している分の定期金債権を請求債権とする部分については,家事調停調書等を作成した裁判所(民事執行法35条3項・33条2項6号)に対し,請求債権の不存在を理由として請求異議の訴え(民事執行法35条1項)を提起できます。
    そのため,この場合,期限到来前の請求債権の部分についても,執行抗告により執行処分の取消しを得られることとなります。
□ 婚姻費用又は養育費に不履行があるものの,不履行の金額を超えて,扶養義務等に係る定期金債権による債権差押えがあった場合,②弁済期が既に到来している分の定期金債権を請求債権とする部分については,家事調停調書等を作成した裁判所(民事執行法35条3項・33条2項6号)に対し,請求債権の不存在を理由として請求異議の訴え(民事執行法35条1項)を提起できます。
    しかし,①定期金債権についての特例に基づく強制執行の要件を欠くわけではありませんから,期限到来前の請求債権の部分について,高等裁判所に対して執行抗告(民事執行法145条5項)を申し立てることはできません。
    そのため,この場合,期限到来前の請求債権の部分について,確実に執行処分の取消しを得られる方法が存在しないこととなりますから,婚姻費用又は養育費に不履行が生じることは絶対にないようにして下さい。
□ 強制執行を受けた債務者が,その請求債権につき強制執行を行う権利の放棄又は不執行の合意があったことを主張して裁判所に強制執行の排除を求める場合には,執行抗告又は執行異議の方法によることはできず,請求異議の訴えによる必要があります(最高裁平成18年9月11日決定)。
    よって,弁済期が既に到来している分の定期金債権を請求債権とする部分については,請求異議の訴えによる必要があるわけです。

 

2 付随する手続
□ 執行抗告の申立てをしただけの場合,執行抗告についての裁判があるまで,強制執行が停止し,又は取り消されることはありません。
   よって,執行を停止してもらうためには,抗告裁判所としての高等裁判所又は原裁判所としての地方裁判所に対し,担保の提供(民事執行法15条)をした上で,執行停止決定を発令してもらう必要があります(民事執行法10条6項)。ただし,執行処分の取消決定は,根拠条文が存在しないことから,発令されることはありません。
   最終的には,執行抗告についての裁判において,期限到来前の請求債権の部分について,強制執行が取り消されることとなります。
□ 請求異議の訴えを提起しただけの場合,受訴裁判所の終局判決があるまで,強制執行が停止し,又は取り消されることはありません。
    よって,執行を停止し,又は執行処分の取消しをしてもらうためには,受訴裁判所に対し,担保の提供(民事執行法15条)をした上で,執行停止決定又は執行処分の取消決定を発令してもらう必要があります(民事執行法36条1項)。ただし,執行処分の取消決定は事実上,請求債権の不存在の証明を求められることから,滅多に発令してもらえません。
    最終的には,受訴裁判所による終局判決において,弁済期が既に到来している分の定期金債権を請求債権とする部分について,強制執行が取り消されることとなります(民事執行法39条1項1号「強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本」参照)。
□ 強制執行が取り消される時期については,①終局判決に仮執行宣言(民事訴訟法259条)が付されていれば直ちに取り消されるのに対し,②終局判決に仮執行宣言が付されていなければ,判決が確定した時点で取り消されます。
□ 執行停止決定については執行停止文書として(民事執行法39条1項7号),終局判決又は執行処分の取消決定については執行取消文書として(民事執行法39条1項1号又は6号),その正本を執行裁判所に提出した時点で初めて,強制執行が停止し,又は取り消されることとなります。

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