預貯金口座の取扱い

第1 総論

□ 預貯金取引のできる金融機関には,ゆうちょ銀行を含む銀行のほか,信用金庫(=信金),信用協同組合(=信組),農業協同組合(=農協,JA),漁業協同組合(=漁協,JF),労働金庫(=労金)等があります。
    なお,①信用「金庫」の場合,原則として融資は会員を対象とする必要があります(信用金庫法53条参照)し,②信用「組合」の場合,原則として融資及び預金は会員を対象とする必要がある(中小企業等協同組合法9条の8参照)点で,銀行等と大きく異なります。
□ 口座振替(=引落し)で返済をしている債権者(主としてクレジット会社。)については,受任通知発送直後に引落しが止まるとは限りません(遅い場合,債権者の側から引落しの停止の手続をとるまでに1週間程度かかります。)。
   そのため,金融機関に自分から連絡して口座振替を停止してもらうか,金融機関の預貯金口座に残高を残さないようにしてください。
    自己破産又は個人再生を予定している場合,結果的に支払う必要のないお金を支払ってしまうこととなる点で特に問題となります。
    これに対して任意整理の場合,いずれ支払わなければならないお金を先に支払うだけですから,それほど神経質になる必要はありません。
□ カード会社等に対する支払と水道光熱費等の支払を同じ預貯金口座からの口座振替により行っている場合であっても,当該預貯金口座を置いている金融機関からの借入がないとき,カード会社等の口座振替が停止した後であれば(余裕を見て,受任通知を発送してから1ヶ月が経過した後であれば),引き続き水道光熱費等の口座振替に利用できます。
□ 口座振替は,①金融機関と収納権利者との間には収納委託契約が,②金融機関と預金者(=収納義務者)との間には預金口座振替依頼契約が,③収納権利者と収納義務者との間には,料金等を口座振替の方法により支払う旨の合意がそれぞれ成立していますところ,②金融機関と預金者との間の預金口座振替依頼契約の法的性質は委任契約です。
    そのため,預金者はいつでも金融機関に対し,振替をして欲しくないものについては振替をしないように要求できます(民法651条参照)。
□ 使用者は,給与を銀行振込の方法で支払う場合,労働者の同意を得た上で,本人指定の銀行その他の金融機関の本人名義の預貯金口座に給与を振り込む必要があります(労働基準法24条1項ただし書・労働基準法施行規則7条の2第1項1号)。

第2 借入のある金融機関の預貯金口座の場合

□ 借入のある金融機関(当座貸越契約を締結して,特定の支店のローンカードで継続的に借りたり返したりしている場合は通常,当該支店の当座預金残高がマイナスになっています。)に受任通知が届いた時点で,預金口座にロックが掛かり,当座預金のマイナス残高と普通預金及び定期預金のプラス残高との間で相殺がなされて入出金ができなくなる可能性がありますから,普通預金口座に残高を残さないようにしてください。
    特に,給与の振込口座になっている場合,受任通知発送前に,会社で振込口座変更の手続をしてください(通常は,給料日の1週間ぐらい前までにする必要があります。)。
    ただし,住宅資金特別条項を利用する予定の個人再生において,住宅ローンを約定通り支払続ける場合,住宅ローンを組んでいる金融機関の口座については,通常はロックされません。
□ 借入のある金融機関の普通預金口座において,光熱費,保険料等を引落しで支払っている場合,引落しができなくなりますから,他の金融機関に引落しの口座を変更するか,保証会社の代位弁済が終わるまで,コンビニ等で現金振込により支払うようにしてください。
   これらの料金の支払が少々遅れても,まずは請求書が来ますから,突然,電気等が止められることはありません。

第3 支払の停止に伴う相殺の禁止

□ 支払の停止があった後に債務者に対して債務を負担した場合であって,その負担の当時,支払の停止があったことを知っていた場合,相殺が禁止されます(破産法71条1項3号本文,民事再生法93条1項3号本文)。
そして,支払の停止とは,債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができない旨を外部に表示する行為をいいます(東京地裁平成21年11月10日判決)から,受任弁護士の受任通知はこれに当たります。
そのため,例えば,借入のある金融機関であっても,当該金融機関が受任弁護士の受任通知を受領した後に預金口座に振り込まれた預金については,支払の停止があった後に債務者(=依頼者)に対して預金債務という債務を負担した場合であって,その負担の当時,支払の停止があったことを知っていた場合に当たりますから,預金と貸付金との相殺は禁止され,仮に相殺されたとしても,破産管財人による否認権の行使を待つまでもなく当然に無効です(最高裁昭和52年12月6日判決参照。なお,金融機関と依頼者との合意による相殺も禁止されています。)。
よって,保証会社の代位弁済が終了すれば,借入のある金融機関であっても,法律上は,従前と同様に預金取引ができます。
□ 借入のある金融機関の預金口座に残高がある場合,保証会社による代位弁済の直前に相殺がなされて残高が0円になるのが普通です。
なお,保証会社の代位弁済後,強制解約してくる金融機関もあります。

第4 預金の帰属

□ 無記名定期預金契約において,当該預金の出捐者が,他の者に金銭を交付し無記名定期預金をすることを依頼し,この者が預入行為をした場合,預入行為者が右金銭を横領し自己の預金とする意思で無記名定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り,出捐者をもって無記名定期預金の預金者と解すべきであるとされています(最高裁昭和32年12月19日判決,最高裁昭和35年3月8日判決,最高裁昭和48年3月27日判決)。
そして,この理は,記名式定期預金においても異なるものではありません(最高裁昭和53年5月1日判決参照)から,預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で記名式定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り,出捐者をもって記名式定期預金の預金者となります(最高裁昭和57年3月30日判決)。
つまり,預金の名義人とお金を出した人が異なる場合,お金を出した人が預金者になるということです。
□ 無記名定期預金とは,住所・氏名を秘匿し,取引に使用する印鑑を届け出るだけで契約される定期預金をいい,預金保険の対象外の預金です(預金保険法51条1項,預金保険法施行令3条7号)。
□ 損害保険会社Aの損害保険代理店であるBが,保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で金融機関に「A代理店B」名義の普通預金口座を開設したものの,AがBに金融機関との間での普通預金契約締結の代理権を授与しておらず,同預金口座の通帳及び届出印をBが保管し,Bのみが同預金口座への入金及び同預金口座からの払戻し事務を行っていたといった事実関係の下においては,同預金口座の預金債権は,Aにではなく,Bに帰属します(最高裁平成15年2月21日判決)。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
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2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。