離婚調停成立後の手続

目次

第1 離婚の届出
第2 離婚後の氏(戸籍)の選択
第3 離婚後の子の戸籍の移動
第4 児童扶養手当の認定請求
第5 ひとり親家庭医療証の交付申請
第6 国民年金の第1号被保険者への種別変更手続
第7 公的医療保険の切り替え
第8 寡婦控除又は寡夫控除の申請

* 東京地裁令和3年2月17日判決は以下の判示をしたみたいです(弁護士作花知志のブログ「離婚後単独親権違憲訴訟/法学館憲法研究所の「今週の一言」で判決のコメントを書きました」参照)。
 親である父又は母による子の養育は,子にとってはもちろん,親にとっても,子に対する単なる養育義務の反射的な効果ではなく,独自の意義を有すものということができ,そのような意味で,子が親から養育を受け、又はこれをすることについてそれぞれ人格的な利益を有すということができる。しかし,これらの人格的な利益と親権との関係についてみると,これらの人格的な利益は,離婚に伴う親権者の指定によって親権を失い,子の監護及び教育をする権利等を失うことにより,当該人格的な利益が一定の範囲で制約され得ることになり,その範囲で親権の帰属及びその行使と関連するものの,親である父と母が離婚をし,その一方が親権者とされた場合であっても,他方の親(非親権者)と子の間も親子であるであることに変わりがなく,当該人格的な利益は,他方の親(非親権者)にとっても,子にとっても,当然に失われるものではなく,また,失われるべきものでもない。

第1 離婚の届出

   離婚調停が成立した後の戸籍の記載の嘱託を家庭裁判所はやってくれませんから,夫婦の本籍地又は届出人の住所地の市区町村役場に対し(戸籍法25条1項),調停成立の日から10日以内に,調停調書謄本(プライバシーの関係で,身分関係だけを記載した調停調書省略謄本(戸籍届出用)で足ります。)を添付して離婚届を提出する必要があります(戸籍法77条1項・63条1項)。
   なお,本籍地以外の市区町村役場に届け出る場合,夫婦の戸籍謄本が必要になります。また,この場合,相手方及び証人の署名押印は不要です。

第2 離婚後の氏(戸籍)の選択

1 婚姻の際に氏(姓)を改めた人は,原則として,離婚によって婚姻前の氏(旧姓)に戻ります(民法767条1項)。
   戸籍についても,婚姻前の戸籍に戻ることになります(戸籍法19条1項本文)ものの,希望すれば,自分が筆頭者の戸籍を作ることもできます(戸籍法19条1項ただし書)。
2 婚姻中の現在の氏(姓)を継続して称したい場合,その旨の届出(=婚氏続称届)を本籍地又は住所地の市区町村役場に提出すればいいです(民法767条2項,戸籍法77条の2)。
   婚氏続称届は,離婚した日(調停成立の日)から3ヶ月以内に行う必要があります(離婚届と同時でも可)。
   婚氏続称届をした場合,自分が筆頭者の新たな戸籍が作られます(戸籍法19条3項)。
   ただし,いったん,婚姻中の氏を称した場合,婚姻前の氏に戻すためには,改めて住所地の家庭裁判所で氏の変更の許可を受ける必要があります(戸籍法107条1項,家事事件手続法160条)。

第3 離婚後の子の戸籍の移動

1(1)   子の戸籍は,離婚後の親権者がどちらであるかを問わず,離婚時の筆頭者(通常は元夫)の戸籍に残ります。
   筆頭者でない人(通常は元妻)が,子を自分の戸籍に入れたい場合,子の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,子の氏の変更許可の申立てをし(民法791条1項又は3項,家事事件手続法160条・別表第一の60項),その許可の後,本籍地又は住所地の市区町村役場に入籍届を提出する必要があります(戸籍法98条1項)。
(2)   子の氏の変更許可の申立ては,婚氏続称届を提出した場合でも必要です。
  
2 子の氏の変更許可の申立ては,子が15歳未満である場合,法定代理人である母が行い(民法791条3項),子が15歳以上である場合,子が自ら行う必要があります(民法791条1項)。
   子の氏の変更許可の申立ては定型的な手続ですから,家庭裁判所で手続を聞けば自分で行える手続ですし,一定の条件を満たす場合,即日審判の対象となります。
 
3 子の親権者と監護者が分離分属している場合,15歳未満の子の氏の変更の申立ての代理権(民法791条1項,3項)は,親権者に留保されており,監護者はこれらの権利義務を有しないと解されています(東京高裁平成18年9月11日決定)。
   なぜなら,監護とは,親権の主たる内容である監護及び教育(民法820条),子の居所指定権(民法821条),懲戒権(民法822条),職業許可権(民法823条)を中心とする身上監護権を分掌し,子の財産につき管理及び代理する権限ないし養子縁組等の身分上の重大な法的効果を伴う身分行為について代理する権限は,親権者に留保され,監護権者にはこれらの権限は帰属しないと解されるからです。
 
4 子の氏の変更許可の審判事件では,子どもに手続行為能力が認められています(家事事件手続法160条2項・118条)から,子どもが利害関係参加をすることができます(家事事件手続法42条5項参照)。

第4 児童扶養手当の認定請求

1   母子手当ともいわれる児童扶養手当は,子どもが高校を卒業する年齢に達するまで受給できるものであって,認定請求をした月の翌月分からの支給となります。
   そのため,月末に離婚調停を成立させたような場合,市区町村役場で速やかに児童扶養手当の認定請求をして下さい。
2 平成22年6月2日法律第40号(平成22年8月1日施行)による改正後の児童扶養手当法に基づき,平成22年12月から,父子家庭に対しても児童扶養手当が支給されるようになりました。

第5 ひとり親家庭医療証の交付申請

   例えば,大阪市の場合,ひとり親家庭医療費助成制度に基づき,ひとり親家庭(=高校を卒業する年齢に達するまでの子どもを養育している,母子家庭又は父子家庭)の人は,①病院・診療所・薬局等で,健康保険証を使って診療や薬剤の支給を受けた際に負担する医療保険の自己負担金から一部自己負担額を控除した額,及び②入院にかかる食事療養費の負担(標準負担額)について,助成を受けられます(入院時の室料の差額など健康保険の給付に含まれないものは除きます。)。
   その結果,①病院等で診療や薬剤の支給を受けた際,1医療機関ごとに入・通院各1日当たり500円以内で,月2日を限度に一部自己負担額の支払が必要となるに過ぎませんし,②平成18年7月診療分から一部自己負担額に月額2,500円の限度額を設けられたため,同一診療月に負担した一部自己負担額の合計が2,500円の限度額を超えた場合,申請により超過分の払戻しを受けられるようになりました。
   ひとり親家庭医療費助成制度の所得要件は児童扶養手当の一部支給制限とほぼ同じですから,児童扶養手当を受給できる母子家庭であれば通常,ひとり親家庭医療証の交付申請もできます。

第6 国民年金の第1号被保険者への種別変更手続

   婚姻期間中,被用者保険(=厚生年金保険又は共済組合)に加入している夫の被扶養配偶者であった場合,保険料の負担がない国民年金の第3号被保険者であったこととなります。
   しかし,離婚に伴い被扶養配偶者でなくなる結果,国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者に変更となりますから,市町村を通じて,第1号被保険者への種別変更の手続をする必要があります(国民年金法12条5項)。

第7 公的医療保険の切り替え

   婚姻期間中,健康保険又は共済組合に加入している夫の被扶養配偶者であった場合,(a)国民健康保険に加入するか,(b)実家の両親等の健康保険又は共済組合の被扶養者として健康保険又は共済組合に加入するか,(c)みずから健康保険又は共済組合に加入する必要があります。

第8 寡婦控除又は寡夫控除の申請

   夫と離婚をした妻は寡婦に当たる結果,27万円の所得控除を受けることができます(所得税法2条1項30号,81条)し,生計を一にする子どもがいる場合,「特定の寡婦」として35万円の所得控除を受けることができます(租税特別措置法41条の17)。
   また,妻と離婚をした夫は,生計を一にする子どもがいる場合に限り,寡夫に当たる結果,27万円の所得控除を受けることができます(所得税法2条1項31号,81条)。
   よって,寡婦又は寡夫に該当する場合,勤務先に対してその旨を申請すれば,源泉所得税を減らしてもらえます。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。