滞納処分

第1 総論

1 滞納処分とは,公租公課の滞納があった場合に,滞納者の財産を差し押え,これを換価し,その換価代金をもって滞納中の公租公課を強制的に徴収する手続をいいます。

2(1) 滞納処分は,①納税者が督促を受け,その「督促状」(国税通則法37条)が発せられた日から起算して10日を経過した日までに国税を完納しないときは,いつでも開始することができます(国税通則法40条,国税徴収法47条1項1号)。
   また,②納税者が繰上請求(国税通則法38条)をされた場合,その納期限までに国税を完納しないときは,いつでも開始することができます(国税通則法40条,国税徴収法47条1項2号及び2項)。
(2)   第二次納税義務者又は保証人の場合,「督促状」ではなく,「納付催告書」(国税徴収法32条2項)が基準となります(国税徴収法47条3項)。

3 税務署の徴収職員は,債権差押えにより,その債権の取立権を取得しますから,自己の名で被差押債権の取立てに必要な裁判上及び裁判外の行為をすることができます。
   ただし,滞納者が有する解除権又は取消権等の形成権については,一身専属的権利及び人格的権利並びに取立ての目的・範囲を超えるような形成権の行使はすることができません。
   そのため,支払督促の申立て,給付の訴えの提起,配当要求,担保権の実行,保証人に対する請求又は破産手続,会社更生手続若しくは民事再生手続への参加(例えば,債権の届出,議決権の行使等)等の行為をすることができるのに対し,債務の免除,債権の譲渡,弁済期限の変更等取立ての目的を越える行為をすることはできません(国税徴収基本通達第67条関係の3)。

4 差押処分に当たり,滞納者が複数の財産を有する場合において,差押禁止財産を除いた財産のうち,いかなる財産を差し押さえるかについては,法令の規定(例:納税の猶予,徴収の猶予及び滞納処分の停止)により差押処分が制限されることのない範囲内において,徴収職員の合理的な裁量にゆだねられていると解されています。
   そして,差押処分を行う時期についても,国税徴収法47条1項1号には「滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は滞納者の国税につき、その財産を差し押さえなければならない」旨規定しており,これは,差押処分の直後に滞納国税が完納されることが確実であったなどの特段の事情がない限り,国税債権を確実に徴収するために,徴収職員に対して早期に滞納者の財産を保全することを求めたものであると解されています(平成21年5月11日付の国税不服審判所の裁決)。

第2 滞納処分としての差押えと生命保険契約の解約返戻金請求権の取立て

〇税務署が生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた場合,差押債権者としての税務署は,その取立権に基づき,契約者である滞納者の有する解約権を行使することができます(最高裁平成11年9月9日判決参照)。
   ただし,その解約権の行使に当たっては,解約返戻金によって満足を得ようとする差押債権者の利益と保険契約者及び保険金受取人の不利益(保険金請求権や特約に基づく入院給付金請求権等の喪失)とを比較衡量する必要があり,例えば,以下のような場合,解約権の行使により著しい不均衡を生じさせることにならないか,慎重に判断するものとされています(国税徴収基本通達第67条関係の6)。
(1) 近々保険事故の発生により多額の保険金請求権が発生することが予測される場合
(2) 被保険者が現実に特約に基づく入院給付金の給付を受けており、当該金員が療養生活費に充てられている場合
(3) 老齢又は既病歴を有する等の理由により、他の生命保険契約に新規に加入することが困難である場合
(4) 差押えに係る滞納税額と比較して解約返戻金の額が著しく少額である場合

第3 滞納処分の執行の停止

1 滞納者について以下のいずれかの事情がある場合,租税債権について滞納処分の執行が停止されます(国税徴収法153条1項,地方税法15条の7第1項,国税徴収法基本通達第153条関係参照)。
① 滞納処分を執行することができる財産がないとき。 
→ (a)既に差し押さえた財産及び差押えの対象となり得る財産の処分予定価額が,滞納処分費及び租税債権に優先する債権の合計額を超える見込みがない場合,及び (b)差押えの対象となり得るすべての財産について差し押さえ,換価(債権の取立てを含む。)を終わったものの,徴収できない租税債権がある場合をいいます。
② 滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
→ 滞納者(個人に限る。)の財産につき滞納処分を執行することにより,滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(国税徴収法76条1項4号参照)になるおそれのある場合をいいます。
   なお,この要件は生計を一にする親族の所得も勘案して判断されます。
③ その所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき。
→ 滞納者の住所又は居所及び財産がともに不明な場合をいいます。

2 滞納処分の停止は税務署長の職権に基づいて行われるものですから,滞納処分の停止がないことに対して不服申立てをしたり,税務訴訟をしたりすることはできません。

3 破産手続において,租税債権について交付要求がされている場合,徴収見込額がないと認められる場合を除き,滞納処分の停止がなされることはありません(国税徴収法基本通達第153条関係参照)。

4 滞納処分の執行の停止が3年間継続した場合,滞納中の租税債権は,延滞税又は延滞金も含めて消滅し(国税徴収法153条4項,地方税法15条の7第4項),滞納者に対し,その旨の通知が書面でなされることになります。

5 滞納処分の執行を停止した場合において,その租税債権が限定承認に係るものであるとき,その他その租税債権を徴収することができないことが明らかである場合,滞納中の租税債権は,延滞税又は延滞金も含めて直ちに消滅し(国税徴収法153条5項,地方税法15条の7第5項),滞納者に対し,その旨の通知が書面でなされることになります。

6 租税債権のうち,少なくとも国税について滞納処分の停止をしてもらえることは実務上ほぼあり得ませんから,滞納処分の停止に期待することは止めて下さい。

7 国民健康保険料等の公課は,国民健康保険法といった個別の法律により「滞納処分の例により徴収することができる」という趣旨の条文が規定されていますから,滞納処分の停止に関する規定等が準用されることになります(国税徴収法2条5号参照)。
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