必要な確認資料

第1 常に収集する必要のある書類

□ 常に収集する必要のある書類は以下のとおりです。
① 申立ての3ヶ月前以内に入手した戸籍謄本(戸籍「抄」本ではないです。)(破産規則15条,民事再生規則14条の2)
→ 大阪地裁の取扱い上,平成22年1月1日以降,裁判所に提出する必要はなくなりましたが,申立代理人において内容を確認する必要があるとされています。
② 申立ての3ヶ月前以内に入手した住民票(世帯全員の分。)(破産規則14条3項1号,民事再生規則14条1項1号)
→ 記載事項の省略は一切しないでください。
③ 申立て直前の2ヶ月分の給与明細(破産規則15条,民事再生規則112条3項1号,136条3項1号)
→ 以下の事項をチェックされ,給与明細から控除の内容が判明しない場合,具体的内容の説明を求められます。
(a) 給与等の額
(b) 財形貯蓄
→ 勤労者財産形成促進法(=財形法。昭和46年6月1日法律第92号。同日施行)に基づく制度であり,一般財形貯蓄,財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄があります。
(c) 勤務先に対する貸付金の返済
(d) 社内預金
(e) 互助会・従業員持株会等の何らかの積立金
(f) 給与振込口座の数
④ 申立て直前の2年分の源泉徴収票又は確定申告書(破産規則14条3項5号ロ,民事再生規則112条3項1号,136条3項1号)
→ 源泉徴収票は所得税法226条に基づく書類であり,確定申告書は所得税法2条1項37号に基づく書類です。
⑤ 申立て直前の2年分の所得証明書(記載事項の省略のないもの)(破産規則14条3項5号ロ,民事再生規則112条3項1号,136条3項1号)
→ 大阪市の場合,「市民税・府民税証明書」といい,堺市の場合,「市民税・府民税(所得・課税)証明書」といわれています。
⑥ 少なくとも過去1年分以上の金融機関の通帳(総合口座通帳の場合,取引のない定期預金部分を含む。)(破産規則15条,民事再生規則112条3項2号,136条3項2号)
→ 自己名義の通帳はもちろんのこと,生計を一にする同居の親族の名義で,(a)給与振込用,(b)クレジットカードの利用代金引落し用,(c)固定電話・携帯電話・電気・ガス・水道,インターネット等の利用代金引落し用の各口座がある場合,それらの通帳等の写しを提出する必要があります。
なお,通帳を破棄した場合,又は合計記帳(=一括記帳)がある場合,金融機関に手数料を払って取引明細書を発行してもらう必要があります。
また,具体的事情によっては,過去1年分よりも前の金融機関の通帳の提出を求められることがあります。
□ 受任通知発送後に合計記帳が発生することがないよう,取引がなくても3ヶ月に1回ぐらいは通帳の記帳をしておいて下さい。
□ 金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である(最高裁平成21年1月22日判決)。

第2 下書きを書いてもらう必要のある書類

1 総論
□ 常に下書きを書いてもらう必要のある書類は以下のとおりです(後で書式はお渡しします。)。
① 裁判所指定書式の報告書
→ 押印欄については,委任状に押した印鑑と同じ印鑑を使用して下さい。
② 裁判所指定書式の財産目録(破産規則14条3項6号,民事再生規則14条1項4号)
→ 休眠中で現在全く使っていない口座であっても,残高がある限り,必ずすべて申告して下さい。
③ 裁判所指定書式の家計収支表(破産規則14条3項5号イ,民事再生規則112条2項2号,136条2項3号)
④ 裁判所指定書式の事業に関する報告書(確定申告をしている場合)
⑤ 事業収支実績表(自営業者が個人再生をする場合)
□ あくまでも下書きを書いてもらうだけであって,これをそのまま裁判所に提出するわけではありませんから,分かる範囲で書いてもらえれば結構です。
□ 下書きを書いてもらう報告書等のデータについては,依頼者がパソコンを使っているのであれば,電子データで送ります。
□ 裁判所指定書式の債権者一覧表(自己破産につき破産法20条2項及び破産規則14条1項,個人再生につき民事再生法221条3項・244条及び民事再生規則114条・140条前段参照)については,受任弁護士が事情をお聞きした上で作成します。
これは,①破産手続開始又は再生手続開始の原因たる支払不能等の状態にあるかどうか,及び②浪費等の免責不許可事由があるかどうかの判断資料とするために作成します。
□ 保証会社による代位弁済があった場合,債権者一覧表との関係でいえば,借入日なり使途なりについては,原債権が基準となります。
なお,カード会社のキャッシングの場合,借入日とカード契約の締結時期は一致しないことがあります。
2 家計収支表
□ 裁判所指定の書式で,破産手続開始又は再生手続開始の申立ての直前2ヶ月間の家計収支表(=家計簿)を作成する必要があります。
項目については適宜,追加・修正等をしていただいて結構ですものの,①同居の親族の収入及び支出,並びに②臨時の収支を含め,企業会計でのキャッシュフロー計算書を作るようなイメージで,現実のお金の流れの全部を忠実に反映するようにして下さい。
そのため,例えば,家賃を滞納している場合,家賃支出は0円ということになります。
□ 同居の親族と明らかに生計を一にしていない場合(例えば,二世帯住宅における,年金暮らしの祖父母),当該親族の収支を除いた家計収支表にしてもらって結構です。
□ 自己破産の場合,借金の返済さえ停止すれば,自分の収入の範囲内で生活できることを家計収支表で裁判所に説明できるように,無駄な出費は控えて下さい。
□ 個人再生の場合,毎月3万円を支払っても,自分の収入の範囲内で生活できることを家計収支表で裁判所に説明できるように,無駄な出費は控えて下さい。
□ 家計収支表を作成する場合,以下の事項に特に注意して下さい。
□ ① 預貯金の動きと矛盾が生じることのないようにしてください。
なぜなら,裁判所は,預貯金の動きには一番,目を光らせているため,預貯金の動きと矛盾した記載をすると,裁判所に対して重大な不信感を与えるからです。
□ ② 2ヶ月分が後払いでまとめて振り込まれる国民年金・厚生年金なり,4ヶ月分が後払いでまとめて振り込まれる子ども手当・児童扶養手当なりについては,振り込まれた月に,振り込まれた額をそのまま収入として計上して下さい。
つまり,平均の月額に直す必要はないということです。
□ ③ 住居費,駐車場代,電話代,電気代,ガス代,水道代,インターネット代,電話料金,新聞代,国民健康保険料,国民年金等の支払額は,1000円単位のラウンド数字にするようなことはせずに,必ず実際の支払額を記載して下さい。
食費代なり日用品代なりガソリン代なり交通費なり子供の学校行事等の費用なりについても,できる限り実際の支払額を記載して下さい。

第3 その他必要な書類

1 総論
□ 裁判所に対する報告はすべて書面でする必要があります(破産規則1条)。
□ 裁判所が指示する資料は必ず用意する必要があります(裁判所書記官の破産手続における事実調査につき破産規則17条,免責手続における事実調査につき破産規則75条2項)。
裁判所は客観的に正しいことであっても,類型的にあるべき確認資料がない限りほとんど信用してくれません。
□ 債務者が破産手続開始の申立てをする場合,破産法の上では,破産手続開始の原因の疎明は求められていません(大阪高裁昭和58年11月9日決定のほか,破産法18条2項参照)ものの,実務上は,破産手続開始の原因を証明することを求められています(破産法20条1項,破産規則13条1項4号参照)。
□ 住民票記載の住所と異なる場所に住んでいる場合,必ず賃貸借契約書のコピーを提出する必要があります。
それ以外の場合であっても,賃料及び敷金・保証金の額を確認するために,賃貸借契約書のコピーを求められることがあります。
□ 不動産を所有している場合,自己名義の不動産について,①共同担保目録のある不動産登記簿謄本(不動産登記法119条1項参照),及び②固定資産評価証明書(地方税法382条の3参照)を提出する必要があります。
□ 借地権付建物を所有している場合,自己名義の建物に関する書類だけでなく,底地の不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書を提出する必要があります。
□ 退職に至る経緯について不審な点がある場合,退職してから2年以内であれば(労働基準法115条参照),退職時の証明書(労働基準法22条1項)を取り寄せることがあります。
退職時の証明書には,①使用期間,②業務の種類,③その事業における地位,④賃金,及び⑤退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては,その理由を含む。)のうち,労働者の請求した事項が記入されます(労働基準法22条3項)。
なお,労働者は,解雇の予告がされた日から退職の日までの間であれば,使用者に対し,解雇理由証明書の交付を請求されます(労働基準法22条2項)。
□ 使用者は,①労働者名簿,②賃金台帳,③雇入れ又は退職に関する書類,④災害補償に関する書類,⑤賃金その他労働関係に関する重要な書類は3年間保管していれば足ります(労働基準法109条,労働基準法施行規則56条)。
よって,退職してから3年を経過している場合,元の勤務先が関係書類自体を廃棄している可能性があります。
□ 自己破産又は個人再生の場合,外国人は日本人と同一の地位を有します(内外人完全平等主義。破産法3条及び民事再生法3条)から,日本人と同様の手続で自己破産又は個人再生ができます。
ただし,住民票の代わりに外国人登録原票記載事項証明書(外国人登録法4条の3第2項)が必要となります。
2 破産手続開始・同時廃止決定後の場合
□ 破産手続開始・同時廃止決定には免責意見申述期間(破産法251条)が定められており,破産債権者において破産者の免責について意見がある場合,免責意見申述期間が経過するまでに,書面(破産規則76条1項)で意見を述べる必要があります。
ただし,特段の事情がない限り,個人の債権者を除き,実際に免責意見を提出してくることはありません。
また,免責不許可事由と関係のない記載がいくらあっても,免責の判断には影響しません(破産規則76条2項参照)。
しかし,具体的な事実関係に基づいて免責不許可事由の主張があった場合,確認資料を添えて裁判所に具体的事情を説明する必要があります。
3 個人再生の場合
□ 個人再生の場合,裁判所から,再生計画の履行可能性の判断資料とするために,生計を一にする同居の親族の給与明細(申立て直前の2ヶ月分),源泉徴収票(過去2年分),所得証明書(過去2年分)等の資料の提出を求められます(民事再生規則112条3項1号,136条3項1号参照)。
同居の親族にそのような資料の提出を頼みにくいといった事情は裁判所にはなかなか通用するものではないのであって,提出できない場合,必ず合理的理由の説明を求められます。

第4 所得証明書

□ 所得証明書は毎年1月1日時点で住民票を置いていた市区町村役場で取得できるものですから,例えば,平成21年1月1日時点の住民票が東大阪市にあった場合,東大阪市役所で取り寄せる必要があります。
□ 所得証明書は通常,過去7年分に限り取り寄せることができます。
□ 平成20年分の所得を証明するのが平成21年度所得証明書であり,平成21年分の所得を証明するのが平成22年度所得証明書です。
大阪地裁の取扱い上,毎年7月1日に基準年度が変化するため,例えば,平成22年7月1日以降に自己破産又は個人再生を申し立てる場合,平成21年度と平成22年度の所得証明書を提出する必要があります。
□ ①確定申告又は住民税の申告をしておらず,かつ,②所得のない人であっても,誰かの扶養親族となっている場合,税額が0円である旨の所得証明書(「非課税証明書」ともいいます。)が発行されます。

第5 給与所得の源泉徴収票

□ 給与所得の源泉徴収票(所得税法226条1項)では,給与収入の額のほか,例えば,以下の項目がチェックされます。
① 住宅取得等特別控除欄
→ 居住用不動産の有無がチェックされます。
② 生命保険控除欄
→ 保険目録の記載と矛盾,乖離がある場合,控除の内容について説明を求められます。
③ 損害保険控除欄
→ 保険目録の記載と矛盾,乖離がある場合,控除の内容について説明を求められます。
④ 配偶者控除欄
→ 配偶者控除欄に記載がなく,配偶者がいる場合,配偶者の収入について説明する必要があります。
自己破産の場合であっても,配偶者の源泉徴収票及び給与明細の提出を求められることがあります。
⑤ 中途就・退職欄
→ この欄に具体的年月日の記載があり,かつ,当該年月日が実際の就職・退職の年月日と異なる場合,具体的事情の説明を求められます。

第6 預貯金通帳のチェックポイント

□ 預貯金通帳では,例えば,以下の部分がチェックされます。
① 貸金業者からの振込,貸金業者への振込
② 個人からの振込,個人への振込
→ ①及び②は,申告外の債権債務の有無を調べるためです。
③ 自己又は家族からの振込,自己又は家族への振込
→ 家族名義の口座に財産を隠していないかを調べるためです。
④ 同一人からの繰り返しの振込,同一人への繰り返しの振込
→ 名義だけを借りている借名口座の存在を疑われます。
⑤ 保険料の引落し,解約返戻金・契約者貸付金の振込
→ 申告外の保険の有無を調べるためです。
特に,申立書及び財産目録に記載されていない保険会社の名前が出てくる場合,具体的事情を聞かれます。
⑥ (a)固定電話・携帯電話・電気・ガス・水道・NHK受信料等の公共料金,(b)クレジット会社の利用代金,(c)家賃,(d)インターネットプロバイダ料金等の引落し
→ これらの引落しがなされている預貯金口座がすべてそろっているかどうかを調査することで,申告外の口座の有無を調べるためです。
⑦ 税金の引落し
→ 例えば,固定資産税の引落しがある場合,不動産の存在が推測されますところ,現在,不動産を所有していない場合,具体的事情を説明しないと,親族名義への変更といった財産隠匿を疑われます。
⑧ 同一ATMで同日に複数回の出金の存在
→ 浪費の可能性を疑われます。
⑨ (a)ガソリン会社系クレジットカード,(b)ETC,及び(c)日本自動車連盟(JAF。Japan Automobile Federation)の会費の引落し,並びに(d)自動車保険の保険料の引き落とし
→ 申告外の自動車の有無を調べるためです。
⑩ 不自然に高額なクレジットカードの引落し
→ 新幹線回数券等の換価行為を疑われます。
⑪ (a)NCK(Nippon chuo Keiba-kai。日本中央競馬会(JRA=Japan Racing Association)の昭和62年以前の略称。),(b)ニッポンチュウオウケイバカイ等,インターネットを通じての勝馬投票券等の購入,払戻金の振込
→ 競馬等のギャンブルをやっていないかどうかを調べるためです。
⑫ 反復継続した多数回の入出金の存在
→ サイドビジネスを疑われます。
□ 預貯金通帳において,大きな金額(原則として,20万円以上)や個人名での預け入れ,払戻しが場合,背景事情を聞かれることがあります。
□ 個人名での振込がある場合,それが①援助なのか,②貸金の返済なのか,③貸金なのかについて,背景事情を聞かれることがあります。
□ ネットバンキングのように始めから通帳が存在しないものについては,例えば,①パソコンの取引画面のハードコピー,②PDF,CSV等のファイル形式でダウンロードできる取引履歴を印刷したものの提出を求められます。
□ 預貯金通帳において「積立」名義で引落しがある場合,積立用口座の存在が推測されます。
□ 預貯金通帳の残高がマイナスの場合,銀行が債権者であることが推測されるとともに,担保となる定期預金の存在が推測されます。
□ ゆうちょ銀行の貯金口座の法令上の預入上限額は1000万円です(郵政民営化法107条1号イ・郵政民営化法施行令2条2項)。
   そのため,例えば,ゆうちょ銀行の貯金口座の上限が500万円に設定されている場合,別のゆうちょ銀行の貯金口座の有無を説明する必要があります。

第7 家計収支表

□ ガソリン代なり駐車場代なりの支出がある場合,①車の名義人が誰であるか,及び②車の名義人と破産者との関係について事情を聞かれます。
□ 破産者の保険加入がないのに保険料の支出がある場合,①保険契約者が誰であるか,及び②保険契約者と破産者との関係について事情を聞かれます。
□ ①固定電話代,②携帯電話代,③インターネット代,④電気代,⑤ガス代,⑥水道代をコンビニで払っている場合,これらの料金の引落し口座の隠匿を裁判所から疑われる結果,コンビニの領収書のコピーの提出を求められることがあります。
よって,破産手続開始又は再生手続開始の申立てをするときまで,保管しておいて下さい。
□ 個人再生の場合,児童手当証書,児童扶養手当証書及び就学援助認定通知書のコピーを提出する必要がありますから,これらの書類を保管しておいて下さい(小規模個人再生につき民事再生規則112条3項2号。なお,給与所得者等再生につき明文はないものの,運用上求められています。)。

第8 退職金関係の書類

□ 現在の職場に5年以上勤務している場合,①勤務先発行の退職金支給見込額の証明書,又は②就業規則(労働基準法89条3号の2),退職金規程(法的には就業規則の一種です。),労働契約書,労働条件通知書(労働基準法15条1項後段,労働基準法施行規則5条3項参照)といった退職金の有無・計算方法が分かる書類に基づき,退職金支給見込額を説明する必要があります。
なお,退職金は労働契約の終了に伴い当然に発生するものではありません(労働基準法89条3号の2のほか,最高裁平成9年10月31日判決参照)から,支給されないことを確認できる書類を提出できれば,財産目録では0円と記載できます。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。