自己破産又は個人再生における報告書

第1 総論

1 報告書の職歴欄は,債務者の弁済能力なり過去の資産形成なりについて判断する上で重要な資料となります。
   そのため,就業時期,稼働期間等に空白又は矛盾がある場合はその理由を確認されますし,仕事の内容と収入が符合しているかどうかも確認されます。

2 破産手続開始決定から遡っておおよそ3年以内に退職して退職金が支給された場合,退職金支給明細書に基づいて,退職金の残額及び使途明細について説明をする必要がありますし,「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」(所得税法226条2項,地方税法328条の14)をもらっている場合,そのコピーも提出する必要があります。
   なお,退職金支給明細書を紛失した場合,退職した年度の前後3年間の所得証明書の提出を求められることがあります。

3 離婚の事実がある場合,離婚した配偶者に対する財産分与の有無について説明する必要があります。
   場合によっては,調停調書等の写しの提出を求められます。

4 保証債務又は第三者のための借入が負債総額の相当部分を占める場合,具体的事情を説明する必要がありますし,求償債権又は立替金債権が回収可能であるかどうかについても説明する必要があります。
   第三者が所在不明である場合,所在調査の報告を求められることがあります。

5 相続の事実がある場合,相続財産の有無,遺産分割協議の内容等について説明する必要があります。

6 勤務先が上場企業である場合,従業員持株制度の有無について説明する必要があります。

7 少なくとも過去2年以内に20万円以上の財産を処分している場合,金銭の使途を記載する必要があります。

第2 自己破産の場合

1 報告書において「破産手続開始の申立てをするに至った事情」を記載する必要がありますところ,ここでは,貸金業者から取り寄せた取引履歴を元にして,大口の借入及び返済に関する事情を中心に支払不能に陥った原因を詳しく説明し,もって,裁判所において,免責不許可事由なり,否認対象行為なりの有無を判断できるようにする必要があります(「否認対象行為」参照)。

2 大阪地裁堺支部に破産申立てをした場合,申立て後,破産手続開始決定が出るまでの間に,以下の事項を記載した報告書を依頼者が自ら作成することを求められますので,あらかじめ内容を考えておいて下さい。
① 今考えて,どうしていたら破産の申立てをしなくてすんだと思いますか。また,免責不許可事由があると思う場合,その原因等について反省すべき点はありますか。
② 借入れなどをしていた時と,現在とを比較して,生活態度,金銭や借入れに対する考え方などに異なる点はありますか。また,1を前提とし,破産申立て後に気をつけていること,あるいは今後気をつけようと考えていることはありますか。
③ 債権者の皆さんに述べることはありますか。
④ その他,述べたいことがあれば書いて下さい。

第3 個人再生の場合

1(1) 個人再生の場合,破産法が定めるような免責不許可事由はありませんし,裁判所の審理も,再生計画の履行可能性が認められるかどうかといった,将来の収支の予測を中心に行われます。
   そのため,報告書において「再生手続開始の申立てをするに至った事情」を記載する必要があるとはいえ,ここでは,再生手続開始の申立てをするに至るまでの過去の経緯を事細かに記載する必要はなく,「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき。」(民事再生法25条4号)に該当しないことを説明できるようにすれば足ります。
(2) 民事再生法25条4号に該当する場合とは,真に再生手続の開始を求める意思や,真に再生手続を進める意思がないのに専ら他の目的(一時的に債権者からの取立てを回避し,時間稼ぎを図ること等)の実現を図るため,再生手続開始の申立てをするような場合など,申立てが再生手続の本来の目的から逸脱した濫用的な目的で行われた場合をいいます(東京高裁平成19年7月9日決定)。

2 個人再生手続では,申立人の家計の収支を基準にして履行可能性の判断を行うこととなりますから,再生債務者と家計を一にする家族の収入の状況を含めた「生活の状況」の記載は,再生計画の履行可能性の判断に当たり特に重視されています。
   その関係で,同居している家族構成員の年齢,職業及び平均手取月収は,内縁の夫又は妻,婚約者,親族関係にない同居人の分を含め,すべて申告する必要があります。

3 別居している家族構成員については,再生債務者の家計に影響を与える可能性のある者に限り申告する必要があります。
   例えば,再生債務者が別居の親から援助を受けている場合,及び再生債務者が別居の親に対して仕送りをしている場合,別居の親の住所を申告する必要があります。
   その際,援助額,仕送額が明らかになる客観的資料がある場合,それらの写しを添付書面として提出することが望ましいです。

4(1) 過去2年以内に処分した財産(保険,退職金,不動産,自動車,離婚に伴う財産分与,贈与等)は,処分の時期,処分額及び使途によっては,否認対象行為(破産法160条,161条参照)に該当する結果,その価格を清算価値に加算することが必要になります(なお,理論上は過去20年以内の行為が否認対象行為となることにつき破産法176条後段参照)。
   また,支払不能の状態で,一部の債権者に弁済した場合,弁済の時期及び弁済額によっては,否認対象行為(破産法162条)に該当する結果,その額を清算価値に加算することが必要になります。
(2) 債権者に対する申立代理人等の受任通知発送日は,否認対象行為該当性の判断の基礎となる実質的危機時期の特定において重要な意味を持ちますから,受任通知発送日から再生手続開始の申立日まで1年以上が経過している場合,その事情を報告書で説明する必要があります。

5(1) 支払不能とは,債務者が,支払能力を欠くために,その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます(破産法2条11項)。
   そのため,弁済期が到来していない債務を将来弁済できないことが確実に予想されても,弁済期の到来している債務を現在支払っている限りは,支払不能ということはできません。
(2)   表面上は,弁済期の到来した債務を支払っていたとしても,返済の見込みのない借入れ等によって資金を調達して延命を図っているような状態にある場合には,支払不能となると解されています(東京地裁平成22年9月16日判決)。
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2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。