同時廃止決定,異時廃止決定及び同意廃止決定

第1 総論

□ 破産手続による破産者の債権債務関係の清算が終了する前に破産手続を終了させることを「破産手続廃止」といい,以下の種類があります。
① 同時廃止決定(破産法216条)
→ 手続費用の不足を理由に破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止する決定です。
② 異時廃止決定(破産法217条)
→ 手続費用の不足を理由に破産管財人が選任された後に破産手続を廃止する決定です。
③ 同意廃止決定(破産法218条)
→ 破産債権者の全員の同意等を理由に破産管財人が選任された後に破産手続を廃止する決定であり,平成20年度は全国の地方裁判所で11件だけありました。
□ 破産手続廃止は,破産債権者に対し配当するだけのお金が破産者にない場合に行われる手続でありますところ,破産者は99万円までは手元に残せるほか,破産管財人の報酬等が破産者の財産から天引きされますから,個人の自己破産の場合,9割以上が「破産手続廃止」という形で終わります。
なお,配当手続を実施した後に破産手続を終了させることを「破産手続終結」といいます。
□ 配当の可能性がある場合,破産管財人が,債権調査手続(通常は一般調査期日が指定されます(破産法31条1項3号)から,期日型といいます。)の終了後であって,破産財団の換価が終了してから(破産法195条1項・204条1項・208条1項参照),裁判所書記官の許可(破産法195条2項,204条1項,208条1項前段)を得て,破産債権者に対し配当を実施することになります(破産法193条ないし215条参照)。
□ 配当の可能性がない場合,配当の前提となる債権調査手続を実施するだけ無駄ですから,債権調査期日は指定されないのが通常です(留保型。破産法31条2項参照)。
□ 破産債権者は,債権者集会の期日において異時廃止に対して意見を述べることができます(破産法217条1項後段)ところ,破産債権者が異時廃止に対して意見を述べる場合,意見の理由をも述べる必要があります(破産規則71条2項)。
□ ①破産債権者が破産管財人から否認権を行使された結果負担するに至った債務と,②破産者の破産債権者に対する債務と相殺することを許されません(破産法71条1号。なお,最高裁昭和39年3月24日判決参照)。 

第2 法人に関する同時廃止決定を出してもらうための条件

□ 大阪地裁の場合,法人について同時廃止決定を出してもらうためには,以下の条件を満たす必要があります(破産・個人再生の実務Q&A30頁参照)。
① 営業停止後,1年以上が経過していること。
② 破産申立時に従業員がおらず,かつ,申立前6ヶ月間に退職した従業員がいないこと。
③ 解散事業年度の確定申告によって,50万円以上の税金の還付が受けられる見込みがないこと。
④ 債務者の清算貸借対照表及び3事業年度にわたる比較損益計算書を添付した上で,申立代理人が作成した,債務者の財産状態に関する調査報告書を提出すること。

第3 法人の納税義務は異時廃止決定後も存続すること

□ 国税不服審判所平成25年5月21日裁決は,以下のとおり判断していますから,法人の納税義務は異時廃止決定後も存続します(東京地裁平成26年8月28日判決でも支持されました。)。
   以下,裁決文からの引用です。
   会社法第471条第5号は、株式会社は、破産手続開始の決定により解散する旨、同法第475条第1号は、株式会社は、解散した場合には、破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合等を除き、同法第2編第9章に定めるところにより清算をしなければならない旨、同法第476条は、清算をする株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす旨、それぞれ規定しているところ、ここにいう「清算」とは、同法第481条に規定する清算人の職務からみて、①現務の結了、②債権の取立て及び債務の弁済、③残余財産の分配をその内容とするものと解され、これら清算人の職務が全て終了して初めて、清算が結了するものと解される。
   そして、会社法第475条第1号が、株式会社は解散した場合には清算をしなければならない旨の規定から、破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除いたのは、破産管財人が、破産会社の破産手続において、破産法の定める残余財産の管理、換価、配当等の破産手続を行って、当該破産手続が終結すれば同条に規定する「清算」が行われたのと同じことになるからであって、破産法第35条が、会社法第476条と同様に、破産手続開始の決定によって解散した法人が破産手続による清算の範囲内において破産手続終了まで存続する旨を規定しているのも、同様の趣旨によるものと解される。
   そうすると、最後配当、簡易配当又は同意配当が終了した後に行う破産手続終結の決定(破産法第220条)によって破産手続が終了した場合には、破産会社の清算手続が終了したということができるが、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認められる場合に、①破産手続開始の決定と同時に行う破産手続廃止の決定(同法第216条の同時廃止)又は②破産手続開始の決定後に行う破産手続廃止の決定(同法第217条の異時廃止)によって破産手続が終了した場合には、破産手続が終結に至らないまま破産手続が終了していることになるから、会社法第475条に規定する「清算」が行われた場合と同じであるということはできない。
   したがって、これら破産手続廃止の決定により破産手続が終了した場合は、会社法第475条第1号に規定する「当該破産手続が終了していない場合」には当たらず、また、清算が破産手続によって行われなくなった以上、それ以前の破産手続開始の決定による株式会社の解散の効果として、当該株式会社は、同法第475条第1号の規定により清算をしなければならないこととなり、同法第476条の規定により、清算の目的の範囲内で法人格が存続するものと解される。
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