大阪地裁における破産管財事件と同時廃止事件の振分基準

第1 大阪地裁における破産管財事件と同時廃止事件の振分基準

0(1) 本基準は,平成29年10月1日以降に破産申立てがあった事件に適用されます。
   ただし,同時廃止事件申立て書式(ver4.0)については,平成29年4月現在,振り分け基準の改定に伴う改訂は予定されていません。
(2) 大阪地裁6民(倒産部)と大弁司法委員会との懇談会報告(月刊大阪弁護士会2017年4月号45頁)には,「今回の振分基準見直しの概要は,①按分弁済は廃止する,②現預金を合計50万円を超えて所持しているときは,破産管財人を選任することを原則とする,③現預金以外の個別財産が20万円以上の場合には管財事件とする,④現預金及び20万円未満の資産の合計額についての総額基準は廃止するが,個別の実質的事情から管財事件とするか否かを判断する,⑤従前は直前現金化した個別財産について換価前の状態の財産として判断がなされたが,これを現預金として扱う,⑥行き過ぎた直前現金化が資産調査を理由とする管財移行となることは従前と同様である,というものである」と書いてあります。
(3)ア 以下の記載は,平成28年度民事執行事件及び倒産事件担当者等協議会 協議結果要旨における①「東京地裁及び大阪地裁における振り分け基準案」(PDF49頁及び50頁)のほか,②月刊大阪弁護士会2017年4月号85頁ないし89頁に基づいて作成したものです。
   ①及び②の文書に基づき振分基準を詳しく書けば,以下のような基準になると思います。
イ 新しい振分基準によれば,例えば,所持する現金等の額が5万円,保有する保険の解約返戻金が30万円で,他に資産がない債務者が,実質的危機時期以降に当該保険を解約(契約者貸付を受けた場合も同様です。)して所持する現金等の額が35万となった場合,破産管財事件へ移行させるべき事情が伺われない限り,同時廃止事件としての処理が許容されることとなります(月刊大阪弁護士会2017年4月号88頁)。

1 振分基準額
   下記2及び3の取扱いを踏まえた上での20万円である。

2 99万円までの現金・預貯金の扱い
(1)   現金
ア   99万円までの現金は法定自由財産であるから,破産法216条1項の「破産財団」には本来含まれない。
イ   保有現金が50万円を超える場合,他にも財産を有している可能性・蓋然性があることから,破産財団をもって破産手続を支弁すると「認めるとき」(破産法216条1項)には当たらず,管財事件とする。
(2) 預貯金
ア 預貯金は法定自由財産ではありませんから,原則として,破産法216条1項の「破産財団」に含まれる。
イ 例外的に,法定自由財産(差押禁止財産や現金など)と同視できる,50万円未満の普通預金については「破産財団」に含めない。
   ただし,この場合であっても,現金と普通預金を併せた金額が50万円を超える場合には,管財事件とする。
(3) 直前の現金化
   原則として,直前の現金化は考慮しないから,現金化する前の財産の性質を勘案しない。

3 財産の積算方法
(1)ア 現金等以外の個別財産は,財産の項目ごとに合計額が20万円未満かどうかを検討する。同一項目内の合計額が20万円未満にとどまったときは,その項目の個別財産は積算対象外とする。
イ 現金等以外の個別財産の中身は以下のとおりである。
① 預貯金(普通預貯金は除く。)
② 保険の解約返戻金
③ 積立金等
④ 賃借保証金・敷金の返戻金
⑤ 貸付金・求償金等
⑥ 退職金
⑦ 不動産
⑧ 自動車
⑨ ⑧以外の動産(貴金属,着物,電気製品等)
⑩ ①ないし⑨以外の財産(株式,会員権等)
⑪ 近日中に取得することが見込まれる財産
⑫ 過払金
(2)ア 個別財産が積み重なって多額になった場合には,管財事件とする。
   この場合,20万円未満の個別財産も積算対象とする。
イ 多額になったといえるかどうかは個別事案ごとに判断する。
   そのため,個別財産の項目ごとの評価合計額が20万円以上のものがなければ,個別財産の総額に現金等を加えた額が99万円を超える場合であっても,同時廃止事件として処理される余地があることとなる。

4 同時廃止のための按分弁済
   同時廃止事件として処理するための按分弁済を許容する運用は廃止する。

第2 所持金額50万円以上で管財事件へ移行することとした理由

○月刊大阪弁護士会2017年4月号87頁には,以下の記載があります(適宜,改行をしました。)。

   同時廃止事件の申立てをした債務者が法律的に合計99万円までの現金等を所持できることと,当該債務者の所持する現金等が合計99万円以下であるとの認定を申立書及びその添付書類だけでできることは,別問題と考えられます。
   破産管財人が,破産手続開始の決定後に,新たに債務者の財産を発見することは少なくないところ,申立代理人の時間的制約による債務者の資産調査の限界等を考慮すると,同時廃止の申立書やその添付資料において,所持知る現金等の合計額が50万円を超えると認められる債務者については,実際に所持する現金等の合計額が本来的自由財産の制限額である99万円を超えたり,現金等のほかに20万円以上の個別財産を所持していたりする蓋然性は否定し難いように思われます。
   これらのことを踏まえると,同時廃止事件の申立書やその添付資料において,所持する現金等の合計額が50万円を超えると認められる債務者については,類型的に,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるには足りず,破産管財人において財産の調査を行うのが相当であると考えられ,破産管財手続へ移行するものとします。
   したがって,同時廃止事件の申立書やその添付資料において,所持する現金等の合計額が50万円を超えると認められる債務者については,按分弁済の運用を廃止する以上,破産管財手続へ移行することになります。

第3 振分基準の見直しは全国的な動きであること

1(1) 平成28年度民事執行事件及び倒産事件担当者等協議会 協議結果要旨(平成28年11月17日開催分)を掲載しています。
(2)    倒産パートでは,同時廃止事件・管財事件の振り分け基準額や現金・普通預金の取扱い,財産の積算方法等の振り分け基準に関わる事項の考え方について協議されました。
   執行パートでは,①債務者財産の開示制度の実効性の向上,②不動産の競売における暴力団員の買受け防止の方策,③子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化,④その他(債権執行事件の終了をめぐる規律の見直し)について議論されました。

2 平成29年10月1日適用開始の,大阪地裁の新しい振分基準は平成28年度民事執行事件及び倒産事件担当者等協議会の協議結果に基づくものですから,全国的な見直しの一環として実施されたものみたいです。

3 執行パートでは,一般社団法人金融財政事情研究会HPに掲載されている,平成28年6月作成の「民事執行手続に関する研究会報告書」をベースとした議論が実施されました。

第4 同時廃止のための按分弁済における取扱い(平成29年9月30日までの取扱い)

0 平成29年10月1日以降,按分弁済による同時廃止が認められなくなりますから,本記事ボックスは,平成29年9月30日までの大阪地裁の運用について書いています。

1 実質的危機時期(破産原因たる支払不能が発生することが確実に予測される時期。通常は支払停止時期よりも遡ります。)以降に現金・普通預金以外の財産を現金・普通預金化した場合(「直前現金・普通預金化」といいます。),原則として,現金・普通預金としては扱わず,現金・普通預金化される前の性質を有する財産とみなされます(過払金返還請求権を現金化した場合につき神戸地裁平成19年9月28日決定参照)。

2 実質的危機時期以降に保険契約の契約者貸付を受けた場合,財産を現金・普通預金化した場合と同様に取り扱われます。
   例えば,解約返戻金が30万円の保険契約について,申立て直前に契約者貸付を受けた結果,申立て時の解約返戻金が15万円になったとしても,これを按分弁済の対象とならない財産とは取り扱ってもらえないのであって,契約者貸付を受ける前の解約返戻金が基準となります。
   そのため,同時廃止による処理を求める場合,30万円の按分弁済を求められることとなります。

3 実質的危機時期以降に現金・普通預金化した財産(実質的危機時期以降に保険契約の契約者貸付を受けた場合も同じ。)を,既に相当額の弁護士費用や必要最低限の生活費のような「有用の資」に充てた場合,その部分については按分弁済の対象とはなりません。
   これに対して,将来の生活費に充てる予定であるといった理由で按分弁済の対象から外すことは,原則として認められていません。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。