特定の債権者を除外した場合の取扱い

第1 個人再生の場合

1 個人再生において,親戚なり勤務先なりに対する債権をわざと債権者名簿に記載しなかった場合,以下の取扱いを受けますから,絶対に止めて下さい。
① 申立てが誠実にされたものではないとして再生手続開始の申立てを棄却される可能性があります(民事再生法25条4号)。
② 申立てに係る事実関係を詳しく調査するため,個人再生委員(民事再生法223条・244条)が選任される可能性があり,30万円が別途必要になります。
   なお,個人再生委員は通常の民事再生における監督委員と異なり,否認権を行使することはできません(民事再生法238条及び245条で民事再生法第6章第2節の適用が除外されています。)。
③ 他の債権者の債権と全く同一の基準で,8割程度が免除されます(民事再生法232条2項・244条)。
→ このような取扱いは,財産権を保障する憲法29条に違反しません(高松高裁平成17年9月28日判決)。
④ 原則として3年が経過するまで,支払を再開することができません(民事再生法232条3項本文・244条。「再生債権であって無異議債権及び評価済債権以外のもの」に当たるため。)。
   ただし,当該再生債権者の責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができなかったような場合,他の再生債権者と同じ時期に支払をすることができます(民事再生法232条3項ただし書・244条)。
⑤ 後日,再生手続が破産手続に移行した場合(民事再生法249条,250条参照),虚偽の債権者名簿を提出したとして免責不許可事由に該当します(破産法252条1項7号)。
⑥ 非常に悪質な場合,特定の債権者に対する担保の供与等の罪に該当し,5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科されることもあります。)に処せられます(民事再生法256条)。

2 個人再生の場合,通常の民事再生と異なり,①債権者一覧表に記載された債権は届出がなくても届出があったものとみなされ(みなし届出。民事再生法225条・244条),②再生債権者は議決権の届出を要せず(民事再生法224条・244条),③一般異議申述期間(民事再生法222条2項・244条)に,届出債権に対して書面で異議を述べることができる他(民事再生法226条・244条),④再生債務者から認否書が提出されることもありません(民事再生法238条・244条。ただし,債権認否一覧表(民事再生規則120条1項・140条前段)を提出することはあります。)。
   その関係で,債権者一覧表に記載しなかった債権であっても,失権することはありません(民事再生法238条及び245条において178条の適用が排除されています。)。
   よって,再生計画に添付する「再生計画による弁済計画表」は,手続内で確定した金額をもとに一応の目安として今後の弁済見込額(通常は100万円)を記載したものに過ぎない反面,弁済計画表の記載が執行力を有するわけではありません(民事再生法238条及び245条において180条の適用が排除されています。)から,債権者一覧表に基づく強制執行は認められていません。

3 大阪地裁第6民事部では,個人再生委員が選任された事件数は,平成23年で14件でした。
   その類型として,再生債務者が個人事業者である類型が11件,法人代表者である類型が2件,ペアローンの単独申立てである類型が1件でした(月刊大弁24年5月号44頁)。

第2 通常の民事再生及び会社更生の場合

1 通常の民事再生の場合,届出のない再生債権は原則として失権する(民事再生法178条)のであって,この点に関する取扱いは会社更生法の場合と同様です(会社更生法204条)。
   ただし,①通常の民事再生の場合,(a)再生債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができなかった再生債権なり,(b)再生債務者が知っている,届出がされていない再生債権なりについては,失権の対象から除外されている(民事再生法181条1項。なお,平成20年8月20日に東京地裁から再生計画認可決定を受けた株式会社クレディアに関する最高裁平成23年3月1日判決参照)のに対し,②会社更生の場合,これらの更生債権についても例外なく当然に失権します(会社更生法204条1項柱書参照)。
   その趣旨は,届出のない更生債権につき失権の例外を認めることが,更生計画に従った会社の再建に重大な影響を与えるものであることにかんがみ,更生計画に定めのない債権についての失権効を確実なものとして,更生手続につき迅速かつ画一的な処理をすべきこととした点にあります。
   よって,貸金業者に対する過払金返還請求権についても,届出をしていない限り例外なく失権します(平成13年1月31日に東京地裁から更生計画認可決定を受けた株式会社ライフに対する過払金返還請求権に関する①最高裁平成21年12月4日判決及び②最高裁平成22年6月4日判決参照)。

2 例えば,平成21年3月18日に東京地裁から再生計画認可決定を受けた株式会社アエルの再生計画案(平成20年12月12日作成。平成21年1月20日修正)5頁には,「債権届出をしなかった潜在過払金返還請求権の取扱いについては,原則として,当該債権者には「責めに帰することができない事由」が存在するものと考えるべきであり,民事再生法181条1項1号の趣旨を尊重して,請求があれば再生債権額の確定を行った上で,債権届出を行った債権と同じ条件にて弁済を行うべきと判断し,本再生計画案においてはそのような取扱いをしている。」と書いてあります。
   そのため,再生会社の再生計画案によっては,再生債務者が知っている,届出がされていない再生債権についても,失権の対象から除外されていることがあります。
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