免責許可決定及び非免責債権

第1 免責許可決定

1 総論
(1) 免責許可決定の制度は,誠実な破産者を更生させる目的のもとに,その障害となる債権者からの責任追及を遮断するために債権者からの責任を免除するものであって,誠実な破産者に対する特典として免責を与えるものであること等を理由として,財産権を保障する憲法29条に違反しないとされています(最高裁昭和36年12月13日大法廷決定,最高裁平成3年2月21日決定参照)。
(2)ア 破産者は,破産手続が終了した時点では債権者からの責任を免除されていない(債権調査手続を経た場合につき破産法221条)のであって,免責許可決定が確定した時点で初めて債権者からの責任を免除されます(破産法253条1項)。
イ   免責許可決定が確定するのは,免責許可決定が出てから1ヶ月後ぐらいです。
(3) 債権者が免責許可決定に違反して破産者に債権の弁済を請求した場合,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科されることもあります。)に処せられます(破産法275条)。
 
2 大阪地裁の取扱い
(1) 大阪地裁の取扱い上,破産手続開始決定と異なり,免責許可決定は債権者に送付されません。
(2)   免責許可決定が出た後に個別の債権者(例えば,NHK)から請求書が届いた場合,個別に免責許可決定のコピーを提供すれば,その後の請求はなくなります。

第2 自己破産の場合の非免責債権

1 自己破産により免責許可決定を得た場合であっても,以下の借金等については免責許可決定による免責の対象とはなりません(破産法253条1項各号)。
① (a)所得税,(b)法人税,(c)消費税,(d)住民税,(e)固定資産税,(f)都市計画税,(g)自動車税等の租税債権(「公租」ともいいます。)(1号)
② (a)健康保険料,(b)厚生年金保険料,(c)国民健康保険料,(d)介護保険料,(e)国民年金保険料,(f)労働保険料,(g)生活保護の費用徴収債権(生活保護法78条)等の公課(1号)
・ 公課(国税徴収法2条5号参照)も租税等の請求権(破産法97条4号参照)に該当します。
・ 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず生活保護費を受給した場合の費用返還債権(生活保護法63条)は租税等の請求権に当たらない結果,「公課」には該当しません。
・ 生活保護の費用返還債権(生活保護法63条)の発生原因の例は各種年金の遡及受給,交通事故の補償金,開始時資産の判明,就労収入認定漏れ,扶助費算定誤りですのに対し,生活保護の費用徴収債権(生活保護法78条)の発生原因の例は稼働収入の無申告,住宅扶助目的外使用,各種年金及び福祉各法に基づく給付の無申告,虚偽申告(世帯員・居住地)です(大津市HPの「第3節 返還金・徴収金」参照)。
③ 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
・ ここでいう「悪意」とは,単なる故意ではなく,不正に他人を害する意思ないし積極的な害意をいい(東京地裁平成15年7月31日判決,及び大阪地裁平成16年8月27日判決参照),詐欺なり横領なりがこれに該当します。
④ 故意又は重過失により加えた,人の生命又は身体を害する不法行為(例えば,飲酒運転で人に怪我をさせた場合)に基づく損害賠償請求権(3号)
・ (a)交通事故の加害者が,強制加入の自賠責保険又は自賠責共済(自動車損害賠償保障法5条参照)に入っていなかった場合はもちろん,(b)任意保険に入っていなかった結果,被害者に対する損害賠償義務(民法709条のほか,人身事故に関し,運行供用者の責任を定める自動車損害賠償保障法3条参照)を完全に履行できなかった場合に問題となります。
⑤ 婚姻費用(=婚姻中の生活費)の分担義務,及び養育費等の扶養に関する債務並びにそれに類似する義務契約に基づく請求権(4号)
⑥ 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権,及び使用人の預り金の返還請求権(5号)
⑦ 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(6号)
・ 債権者名簿に記載しなかったことが過失に基づく場合も含まれます((a)神戸地裁平成元年9月7日判決,(b)東京地裁平成14年2月27日判決及び(c)東京地裁平成15年9月12日判決参照)。
・   当該破産者について破産手続開始決定があったことを知っていた者の有する請求権は除きます(6号括弧書き)。
⑧ 罰金等の請求権(7号)
・ 罰金,科料,刑事訴訟費用,追徴金,過料のことです(破産法97条6号)。
 
2 3号及び4号の非免責債権は,現在の破産法(平成16年6月2日法律第75号。平成17年1月1日施行)の制定に伴い新たに設けられました。

3 罰金等を納付しない場合,民事執行法等に基づき,検察官の命令によって強制執行されることがあります(刑事訴訟法490条)。

4(1) 自賠責保険又は自賠責共済に加入しないで交通事故を起こした場合,政府(=国土交通省自動車交通局保障課)が,被害者に対し,自動車損害賠償保障事業に基づいて補償を行い(自動車損害賠償保障法72条1項後段),加害者に対する権利を代位取得します(自動車損害賠償保障法76条)から,政府に対する損害賠償義務まで発生します。
(2) 交通事故については,「弁護士山中理司の交通事故相談HP(大阪)」を参照してください。 
 
5 公租公課は免責されないものの,自己破産又は個人再生の場合,滞納額を裁判所に申告する必要があります(破産規則14条1項2号,民事再生規則14条1項3号)。
   そのため,現時点での公租公課(特に,住民税及び国民健康保険料)の滞納額について市役所等に確認しておき,できれば,書面で滞納額を明らかにしてもらって下さい。
 
6 重過失に基づく失火に起因して近隣家屋に類焼損害を与えた場合,近隣家屋の居住者の生命又は身体に損害が発生していない限り(破産法253条1項3号参照),免責許可決定による免責の対象となります。
   なお,ここでいう重過失とは,通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも,わずかの注意さえすれば,たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに,漫然これを見すごしたような,ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態をいいます(最高裁昭和32年7月9日判決参照)。
 
7 破産法253条1項柱書及び3号は,破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権は,免責許可の決定が確定したときであっても,破産者がその責任を免れるものではない旨を定めています。
   しかし,破産者の不貞行為に基づく損害賠償請求権は,たとえそれが故意又は重大な過失によるものであるとしても,上記の「人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」と同視すべきものであると解することまではできません(東京地裁平成21年6月3日判決)から,免責許可決定による免責の対象となります。

第3 非免責債権に該当するかどうかの判断方法

1 破産債権が非免責債権に該当するかどうかは破産手続内で確定的に決まるものではありません。
   具体的には,①非免責債権に関する確定判決が存在しないのであれば,破産債権者が後日,訴訟提起をしてきた場合に訴訟手続において判断してもらい,②非免責債権に関する確定判決が存在するのであれば,破産債権者が後日,強制執行をしてきたような場合,確定判決に係る第一審裁判所に対し(民事執行法35条3項・33条2項1号),請求異議の訴え(民事執行法35条)及び執行停止の申立て(民事執行法36条)を提起することで判断してもらうこととなります。

2 請求異議の訴えは,破産債権者が強制執行をする前の段階でも提起することはできます。
1(1) 交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
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